FLOORING
フローリングは木の文化

オークが本流

なぜオークに行き着くのか。
2022/12/15

フローリングは樹種によって持ち味が変わります。パインなどの柔らかい木は足ざわりが良い反面傷つきやすい。ハードメープルなど硬い木は傷つきにくい反面硬質な足あたり。私たちがヨーロッパ産のオークをお薦めする理由をご説明します。

針葉樹と広葉樹

杉や松など、松ぼっくり様の実をつける針葉樹。ブナやクリなど、どんぐり様の実をつける広葉樹。幹がまっすぐ伸びて空気層を多く含む針葉樹は柔らかく、垂直に使う柱などに適しています。枝を横に広げ幹が曲がりやすく密につまった広葉樹は硬く、ハードウッドと呼ばれ、床やテーブルなどの加重がかかる水平面に適しています。
ヨーロッパの高級フローリングの主流樹種は広葉樹であるオークです。土足で歩くため、擦り減らない硬さが必要なので広葉樹を使います。なかでもオークが好まれるのは、ヨーロッパの生活に古くから利用されてきた、愛着のある木だからです。

松ぼっくり様の実をつける針葉樹 どんぐり様の実をつける広葉樹

自然の象徴としてのオーク

ユーロ以前のヨーロッパ各国の硬貨には、オークの葉や樹形がモチーフとして多く用いられていました。各国民がオークに親しみを感じる背景には、ギリシャ神話やケルト神話など、各民族の伝説において、オークが神の木と語られているからです。森の中で、枝を横に広げ太くうねるようにそびえるオークは、生命力の象徴として畏怖の対象であり、自然を代表するものとして愛されているのです。

イタリアの20リラコイン

オークの有用性

オークは北半球の温帯地域、アメリカ大陸からユーラシア大陸、日本に至る地域に生育しています。農耕開始以前から、オークのもたらすドングリは、水に晒してタンニンを除き、栄養価の高い主要な食物として各民族が利用していました。
ヨーロッパでは、古代から、原生林を構成する様々な樹種の中でもオークを重用してきました。ドングリの恵みだけでなく、伐採した木を加工し、建物の骨組み、建具、湿地の道路、柵、樽、棺、船をつくることができました。樹皮からは獣皮を鞣すタンニンを採り、虫こぶからインクの原料を得ました。
Y字型に分かれる枝ぶりは、屋根を支える斜め材や船底のカーブに最適で、構造材として使える100年を超える大木が利用されました。

オークを育てて利用する

中世では、建築や造船のために伐採されたオークの大木の切株からは、ひこばえと呼ばれる若芽がたくさん生えてきます。成長とともに芽が淘汰され、数本の幹が成木として育ちます。これが20年ほど育てば、棒材や炭材として使え、伐採して利用します。このようなオークの自然な再生を「萌芽更新」と呼び、そうしてできた林を「コピス(Coppice)」と呼びます。
日本の里山のように、農地、放牧地に隣接するコピスで、燃料の薪や、肥料の落ち葉を採り、ドングリを餌とした養豚、キノコの採集などを行い、日々の生活に役立てました。人の手が入ることで林は整備され、定期的に伐採することで、オークの林は健全に維持されてきました。

造船とオーク

現ノルウェーを拠点に9~12世紀に活躍したヴァイキングは、オークを加工する優れた造船技術を持って外洋に乗り出し、北部ヨーロッパのみならず、大西洋まで航海することができました。中世に入っても、海に面した、オランダ、イギリス、フランス、スペイン、ポルトガルは、オークによる造船の技術を高め、15世紀には、ポルトガル、スペインのイベリア半島の国々による大航海時代が始まりました。
各国が競うように造船した結果、構造材として使えるオークの森は枯渇していきます。国家事業として、伐採後の植林が進められましたが追いつかず、アジア貿易で入手した造船に適したチークを用いたり、早くに枯渇したイギリスでは、石炭開発による鋼鉄船に取り組み、これが産業革命の礎となりました。

教会とオーク

中世は、森林の開墾が進んだ時代。その先導役となったのは、修道士でした。奥深い森に修道院を建て、ブドウやオリーブの畑をつくり、現在のワイン産地の礎となりました。教会建築用のオークの大木を得るため、植林から伐採まで200年かかる育成管理を修道士が代々受け継ぎ、大航海時代のオークの乱伐からもオークの森を守っていました。
フランス革命以降、ヨーロッパの国民国家化で、教会の領地が国に移管されますが、貴重なオークの森の管理は引き継がれます。現在、民間企業によっても計画伐採管理が引き継がれていますが、1000年以上も続く森林管理の伝統は、生物多様性の生態系を守ってきました。

石づくりの教会でも、天井の小屋組みや床などにオークがつかわれた

オークはフローリングの本流

美しい木目と適度な硬さを持つオークはフローリングとして最適な樹種としてだけでなく、歴史的にも、精神的にも、ヨーロッパの人たちに愛されているから選ばれています。
私たちが扱うマルガリテッリ社のブランド「リストーネジョルダーノ」は中世から続くオークのストーリーを継承しています。フランスワインの名産地ブルゴーニュのフォンテーヌの森は11世紀から修道士が教会用建材としてオークを育成してきました。

国に移管したこの森の180年以上育った立ち木の伐採権をマルガリテッリ社が入札で手に入れ、1000年続く歴史を継承しています。
立ち木一本づつに生育記録が残された森だからこそできる、180年以上育った木しか伐採しないというルール。そして伐採後、180年後のために植林して管理していく。伝統が育てた最高のオークは、森に隣接する製材所で製材し、イタリア、ペルージャの工場でフローリングに仕立てられます。
先人たちが1000年守り続けてきた持続可能な生物多様性の森のストーリーが宿っているのです。SDGsを最高の形で具現化しているものづくりがここにあります。
これが私たちがヨーロッパのオークフローリングをお薦めする理由です。

ドングリから萌芽、間伐をへて180年管理育成されたオークは直径70cmにもなる

直径70cm以上のオークを製材するからできる幅39cmのフローリング Listone Giordano atelier Quattrocento Italiano Città della Pieve 1999

参考文献
『ドングリと文明 偉大な木が創った1万5000年の人類史』(ウィリアム・ブライアント・ローガン:著 山下 篤子:訳 日経BP社、2008)
『オークの木の自然誌』(絵:リチャード・レウィントン 文:デイヴィッド・ストリーター 訳:池田 清彦 メディアファクトリー、1998)

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