GUIDEBOOK

裸足ですごしたい床

身体感覚でフローリングを選ぶ
2022/12/06

裸足で歩きたい床

日常生活のなかで、天井や壁を触ることはありませんが、床は常に足裏で接しています。暖かい時期は、床の上を裸足ですごす方も多いと思います。細かなホコリのざらつきも感じてしまう程、足裏は敏感です。
自邸のフローリングを新たに選ぶとき、材質や色、メンテナンス性にまず目が行きます。そこにもう一つ、身体感覚で素材を選ぶ楽しみを付け加えましょう。
フローリングのショールームは、販売しているフローリングが敷いてあり、実際の歩行感が確かめられます。私たちのショールームは各30㎡のスキップフロア11面に違うフローリングを敷き、シームレスに違いを体感できます。私たちがお客様にお声がけするのは「よろしければ、お家のように靴をお脱ぎになって歩いてみてはいかがでしょうか」です。手袋をしたまま箸を選ばないのと同じ様に。
では、裸足に気持ちいいフローリングとはどんなものでしょうか。

熱伝導率の低い素材が気持ちいい

熱伝導とは、熱が高温から低温に伝わる現象です。冬に熱伝導率の高い金属にさわると手の熱が金属に瞬時に伝わり、手は冷たく感じます。床の素材で熱伝導率が高いのは石です。夏、裸足に伝わる冷感は心地いい反面、冬はとても裸足では歩けません。しかしその伝導率の高さは、床暖房の熱を効率良く伝える素材となります。寒暖差の大きい日本では、石の床材は床暖房とセットで取り入れる必要があります。石に比べ、木は熱伝導率が低く(鍋の持ち手に使われる様に)、一年を通じてストレスなく過ごせます。木は細胞の周りに細胞壁を持ち、成長が終わった細胞部分が空気層となり残った細胞壁が硬化して硬い組織をつくります。ダウンジャケットが暖かい様に、空気は断熱性が高く、微小な空気層を多く内包する木は熱を伝えにくいのです。

木の中でも、軽い木ほど空気層を多く含むので、熱伝導率が低くなります。なじみのある軽い木の桐の箱の手触りの良さで実感できると思います。杉やヒノキの針葉樹の方が、オークやウォルナットの広葉樹より熱を伝えにくいといえます。軽い木は柔らかくもあり、足当たりがやさしい反面、傷がつきやすくなりますが、裸足の心地よさを最高に満たすフローリングは、柔らかい針葉樹の無塗装の無垢材といえます。まさに、古民家の縁側の縁甲板ですね。ただし、縁甲板は汚れ防止のために、煤や柿渋、植物油などで塗装されていました。床材として考えた場合、汚れを防ぐ表面仕上げと、椅子の脚や日常的な物の落下などの衝撃でも傷がつかない堅牢さも必要となります。
つぎに、日常生活を気兼ねなく過ごせる裸足に気持ちいいフローリングを考えてみましょう。

適度な凹凸が気持ちいい

木の板の木目を浮き上がらせるように凹凸の加工を施すことを「浮造り(うづくり)」といいます。*詳しくは下記のコラム「板の木目と浮造りの話」参照
フローリングに浮造りを施すと、微妙な凸凹のおかげで足裏がペッタリと吸い付くことがなく、汗ばむ季節でもサラッとした感触が得られます。また、滑りにくさも生むため、快適にすごせます。
英語でハードウッドと呼ばれる広葉樹は針葉樹よりも傷つきにくいので、硬いので加工は難しいですが、浮造りした広葉樹の板を木肌の感触を損なわない硬度のある塗装で仕上げたフローリングは、気遣いなく使えて、裸足に心地よいフローリングといえます。

Listone Giordano atelier Heritage Filigrana Siena 1179

広葉樹のなかでも、オークは木目がはっきりとしています。水分、養分を吸い上げるための導管という管が他の種より太く、木目に沿って並んでいるためです。ストローの穴、またストローを縦に切った溝のような微細な凹凸として表面に現れ、陰影で木目を強調し、手触りだけで木目をなぞることができるほどです。この導管の凸凹をつぶすことなく繊細な塗装(目はじき塗装といいます)をかけたフローリングは、浮造りしない状態でも裸足に心地よく、ペットの爪が滑らないほど滑り止めの効果があります。
私たちが扱うマルガリテッリ社のブランド「リストーネジョルダーノ」では、オークの表面に加飾を施した「atelier(アトリエ)」と名付けたフローリングのコレクションがあります。浮造りは「Filigrana(フィリグラーナ)」、日本の名栗(なぐり)に似た手がんなの跡を残した「Traccia (トラッチャ)」、製材したてのようなのこぎりの跡を残した「Filo di lama (フィロディラーマ)」の3種類の趣のある仕上げで、裸足に心地よく、リズミカルな感触が楽しめます。

Listone Giordano atelier Heritage Traccia Fiesole 1455

Listone Giordano atelier Heritage Filo di Lama San Gimignano 1311

板の木目と浮造りの話

木は、樹皮のすぐ内側の層が細胞分裂で樹皮を外側へ押し広げるように成長します。根から水分、養分を枝葉に運び、葉の光合成エネルギーを細胞に運んで細胞分裂を繰り返し成長します。
日本やヨーロッパなどの冬に寒冷になる地域では、木は春から夏にかけて根から水分、養分を吸い上げ、葉を茂らせて盛んに成長します。夏から秋にかけて細胞分裂は抑えられ、冬場は成長を止めます。木は細胞の周りに細胞壁があり、これが硬化して木部となり、次の春にその外側に成長を繰り返します。この活動の記録が年輪となって現れます。
春から夏に成長した部分の細胞壁は隙間を多く持ち柔らかい(春材)。
夏から秋の細胞壁は密に詰まって硬い(夏材)。
木の切り株を見ると、この差が、粗い層と密な層が同心円状に繰り返し現れるように見えます。これが年輪です。

木を板に製材する場合、立木の状態の縦方向、つまり年輪に直交する様にスライスします。小口切りすると同心円の長ネギを縦に切った時の様に、板に製材されると、直線や筍のような山形の線となって年輪が現れます。これを木目と呼びます。

木造の寺社の外壁や回廊の木部は、木目が浮き上がったように凸凹しています。これは風雨に晒されたり、長年の摩耗で、柔らかい春材の部分が削られたからです。

趣のあるこの状態を人の手で仕上げる方法を浮造り(うづくり)といいます。春材より硬く夏材より柔らかい素材のブラシ状のもので表面を磨くと、春材が削られ木目が浮き上がります。

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