FLOORING
フローリングは木の文化

いにしえのフローリングスタイル

製材技術の進歩とともに
2023/08/24

フローリングはヨーロッパ起源の木の文化だと考えます。そのなりたちを見る前に、材料である木材利用の変遷を見てみましょう。

文明を支える森林

エジプト、ギリシャ、ローマと続く古代文明は、地中海を左回りに北上していきます。文明を維持発展させた権力の鍵は、エネルギー源であり、覇権を拡大する造船のための森林資源です。より森林資源の豊富な地へ権力の中心が移っていったことが、ローマからスペイン、フランス、イギリスへの覇権の推移からもイメージできます。次に、近代までのヨーロッパの木材利用を見ていきます。

ヨーロッパ近代までの木材利用

農地の拡大のために森林は開墾されていきます。しかし、斧で伐採し、人力で樹を運び出す訳ですから、今の感覚の環境破壊とは違い、森林と共存するかたちで、薪を得たり、オークの森では豚が放牧(どんぐりが餌)されていました。

15世紀の絵暦「ブレヴィアリウム・グリマ二」の11月の暦にはオークのドングリによる豚の飼育が描かれている。 The Grimani Breviary November 国立マルチャーナ図書館, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

中世も終わる16世紀ごろには、国家事業として、製鉄、製塩という大量に薪燃料を必要とする産業が注力されました。また、伐採した樹を筏に組んで河口までの大量輸送が可能になり、大航海時代の大型船需要と相まって、森林の伐採が進みました。国家間の戦争も鉄の需要に拍車を掛けました。ガラス、レンガ、陶器なども産業化し、石炭が主流になる近代に至るまで、木材の9割が燃料として消費されたと考えられています。

ライン川をオランダに向けて下る筏は、最長400メートルにもなりました。

製鉄工場が周りの伐採地に成長の早い針葉樹を植林したり、森を区画分けし、順番に伐採をして自然再生を目指すなど、今に続く持続性の萌芽もこのころに見られます。

ヨーロッパ近代までの製材技術

古くは、森林での伐採は斧で行われ、斧やナタで年輪に沿って割りひらくように製材されていました。伐採は19世紀までも斧が続きますが、中世に入ると製材にはノコギリが使われ、12世紀ごろから水車を動力にしたノコギリも使われました。切り出した板は、手斧のようなカンナで整えられ、均一ではなく、なめらかにうねる表面でした。

中世の建築現場  のこぎりで切った跡を手斧のようなカンナで仕上げる johann wilhelm architectura civilis Peter Troschel, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

いにしえのカンナ跡を残した仕上げを再現したフローリング  Listone Giordano atelier heritage tracca

16世紀には上層階級による家具の需要が増し、華美な家具が求められ、大航海時代にもたらされたマホガニーなどの貴重な木材がもてはやされました。貴重な材を効率よく使うため、イタリアでは数ミリの厚さに挽く単板技術が興り、芯材の上に高級材の薄板を貼る手法が考えられました。これにより、接着面の平滑さが求められ、台付カンナで仕上げる技術が向上しました。
18世紀産業革命の時代、円形のノコギリと動力により、製材は機械化され、寸法の定まった板材をつくることが容易になりました。

丸太から薄く板を挽くことで貴重な南洋材を化粧材として効率よく利用できる Veneer sawing André Jacob Roubo, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

製材技術から見た、いにしえのフローリングスタイル

近世までの建築の方法は、イタリアや南仏の南ヨーロッパは石積み、中央ヨーロッパ以北は木造の平屋が主流でした。庶民は土間の床にワラなどを敷き、教会や上層階級は舗装の意味で石やタイルを敷きました。近世後、多層階の建築が建てられるようになり、石積みでも天井の梁は木造ですので、2階の床は梁の上に板(根太)を置いたものとなります。木造も、ログハウスのような木材を積み上げる工法から、柱と梁の軸組工法へ変わることで多層化でき、同じように根太に板を渡したものが床になりました。 手作業で製材していた頃の板は、貴重な建築用材を無駄なく使う意味もあり、幅も長さも違うものを用途に合わせて使っていました。また、短い板を組み合わせて寄せ木の板にしました。ですので、いにしえのフローリングスタイルは、幅違いの乱尺貼りや寄せ木のパーケットと言えます。

幅の違う組み合わせを再現したフローリング Listone Giordano atelier ancien european walnut

小片の板を寄木して方形にしたパーケットを再現したフローリング Listone Giordano atelier deco rovere versailles parquet

参考文献
『木材と文明』(ヨアヒム・ラートカウ:著 山縣光晶:訳 築地書館、2013)
『中世の職人Ⅱ建築の世界』(ジョン ハーヴェー:著 森岡 敬一郎:訳 原書房、1986)

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