FLOORING
フローリングは木の文化

進化するフローリングスタイル

加工技術の進歩と新たな価値観
2023/08/24

機械による加工技術の進歩が、フローリングをより良いものへと進化させました。そして今、技術よりも重視されている「持続性」の価値観によるフローリングスタイルの変遷をまとめてみます。

木材の工業製品化 合板

産業革命は、動力によって人力ではできなかった加工技術を生み、木材を工業製品化していきます。中でも「合板」の工業化は自然素材の規格化というエポックメーキングでした。19世紀の終わり頃、ロータリーレース(rotary lathe)という、回転する丸太に刃をあててカツラムキのように数ミリの薄板を挽く機械の誕生により、大きな板を得ることが可能に。それを接着剤で貼り重ねることで、厚さ/幅/長さが規格化された板材(合板)が生まれました。

ロータリーレースで丸太をカツラムキして薄くて長い板をつくる  Italy tabu 社 の突き板工程動画

木の板は湿度変化で、木目と直行する方向へ反ります。合板は木目方向が互い違いになるように重ねることで、反る方向を相殺して、木が持つ工業製品としての弱点であった形状変化を克服しました。

木目方向を交互に直交するように積層すると反る方向を相殺できる形状安定性の高い板ができる。

加工技術の進化とフローリングスタイル

自然乾燥に頼っていた時代、無垢材を床材として使う時、形状変化を抑えるために、幅を狭く長さを短くしていました。

細巾で短い板を集めたパーケット

豊富な森林資源を持つ北欧では、合板や集成材などの木材加工産業が栄え、20世紀中頃に、3層フローリングの生産が始まります。厚みが4ミリ前後の無垢の表板、短い無垢板を並べて板にした10ミリ前後の集成材を芯材に、2ミリ前後の無垢板を底板にした3層構造複合フローリングです。表の無垢板と芯材の集成材の木目方向を逆にすることで、反りを抑え、幅広で長尺でも形状が安定したフローリング製造が可能になりました。

集成材を芯材にして反りにくくした3層構造

第二次世界大戦後の世界的な都市部の住宅供給ニーズもあり、無垢板よりも安価で工業製品として安定した3層フローリングが主流となっていきます。

ジョルダーノ博士の発明

1984年、グリエルモ・ジョルダーノ(Guglielmo Giordano)博士は無垢および3層フローリングの欠点を払しょくする画期的なフローリングを発明しました。栽培から製材、建築用集成材加工に至る林業から木材工業全般のエキスパートである博士が導いたフローリングの最適解は、広葉樹の挽板とバーチ(カバノキ)合板を組み合わせた2層構造の複合フローリングです。その優位性は、形状安定性、高精度、信頼性、美しさ、耐久性そして自然への敬意にあります。

イタリアのマルガリテッリ社が、この特許を製品化し、博士の名を取って「リストーネジョルダーノ」というブランドを興しました。このフローリングの技術的革新は多層構造のバーチの基材にあります。バーチ合板の横方向の切れ込みと、精緻なサネ加工によるジョイントが相まって、フローリングの反りを抑え、長期間形状を安定させます。

ジョルダーノ博士が導いたフローリングの最適解は、広葉樹の挽板とスリット入りバーチ合板を組み合わせた2層構造の複合フローリングです。

「リストーネジョルダーノ」ブランドは、世界中で、「卓越した高級フローリング」の代名詞と評されるようになりました。そして20年の特許権が切れた後、世界中の高級フローリングメーカーが追従しています。

接着剤と塗料の進化とフローリングスタイル

フローリング製造には接着剤と塗料という2つの化学物質が使われます。にかわ等の天然接着剤やヴァーニッシュ(ニス)などの自然塗料に代わり、1950年代の合成樹脂製造の進歩により、合成樹脂と揮発性溶剤を組み合わせた接着剤、塗料が主流となります。第二次世界大戦で戦火に遭ったヨーロッパの都市部に集合住宅が多く造られ、これらの建材に残留する化学物質が引き起こすアレルギー問題が、1970年代にヨーロッパでいち早く顕在化します。同時期に工業廃棄物による環境汚染問題とともに、自然保護、化学物質規制がヨーロッパで進みました。フローリングスタイルにおいては、自然回帰と、技術開発による無害化の2つの指向に分かれます。人工乾燥機で無垢の板を乾燥させて反りにくくして、オイルやワックスで表面を仕上げる、合成樹脂を使わない無垢フローリング。それに対して、技術革新により、ホルムアルデヒドを含まない接着剤、揮発性溶剤の代わりにUV(紫外線)照射により硬化する塗料を使った、人体に無害の複合フローリングが開発されました。UV硬化塗料はUV照射ですぐに固まるため、従来の塗膜よりも厚く硬質に仕上がり、傷に強く耐久性とメンテナンスフリーをもたらすとともに、揮発溶剤を使わないので、工場で働く人の体にも優しいメリットもあり、高級フローリングでは主流の仕上げです。

UV硬化塗料を塗布したフローリングを紫外線ランプの下を通過させて瞬時に定着させる工程  Finland Timberwise社

「持続性」が求めるフローリングスタイル

21世紀に入り、「LOHAS」、「ETHICAL」、「SDGs」という新しい価値観が、生活者の消費行動に、生産者の資源調達意識に、大きな影響を与えています。それらの価値観に通底している本質は「持続性」です。人間の良い生活の持続、自然環境の持続。自然と労働力の搾取から目をそらさず、自分の消費や生産の判断基準を見直すことが求められています。
では、「持続性」が求めるフローリングスタイルとは、どんなものでしょうか。
自然が好きだけど、自然を守るために自然資源を使った製品は使わないというパラドックスがあります。再生可能な森林資源は、計画的に育てて計画的に消費することで、産業となり、持続的に維持されます。計画的に管理運営されている森林から伐採された木材であることを認証する「FSC認証」などの国際的制度があり、原料が認証材であることがまず求められます。
フローリングに最適な樹種であるオークは、伐採されるまで100年以上かかります。合板に使われるバーチは30年です。オークとバーチ合板の複合フローリングは、同じ厚さのオーク無垢フローリングに比べ、貴重なオークの消費量は1/4ですみます。このような効率的に自然資源を利用し、削り直して使える、すぐ廃棄されない良質なものに仕立てられたフローリングであることも求められます。

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