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工業製品だけど自然素材 経年で活きるには施工法が大事

自然素材は自然環境の影響を受けて変化します
2023/07/27

フローリングは工業製品ですが、無垢の木を加工した無垢フローリングや、表面に2mm厚以上の無垢板を使った厚挽板複合フローリングは、木が持つ天然の性質を宿しています。

床材自体の経年変化、変色、伸び縮み、傷、減り

<変色>
木の板は、屋外で太陽光にさらされ続けると、紫外線の影響で表面がシルバーグレーに変色していきます。室内に敷かれたフローリングも紫外線で日焼けします。窓から差し込む外光、LEDが主流になる前は、蛍光灯の紫外線の影響を受けてゆっくりと色が変化していきます。この室内における経年による変色は、直射日光下でグレーになるのとは違い、樹種によって元の色から薄くなったり濃くなったりと一様ではありません。白っぽいオークは飴色に、濃いウォールナットは黒味がぬけて明るくなるように、本物の木であるからこそ、それぞれの木の持ち味が現れるということです。また、着色塗装したものは、塗料の顔料の退色があり、木の素地の色に近づきます。

2年半、室内の窓際で日焼けしたもの。左が元の着色された状態。右は日焼けして着色が薄くなり素地の色に近づいた状態。Listone Giordano prima190 OAK biancospino Naturplus2 fibramix

<伸び縮み>
無垢のフローリングは室内環境の湿度によって伸び縮みします。厚挽板複合フローリングは形状安定性がいいですが、日本の冬の過乾燥状態で痩せることがあります。スキー板の様に幅が狭くて長いフローリングは幅方向に変化します。 3.6m四方の8畳間に、一般的な幅90mmx長さ1800mmのフローリングを敷くと図の様に、長さ方向は3枚分ですが、幅方向は40枚になります。仮に幅方向に0.5mmづつ変化するとして、0.5x40=20mm変化することになります。後に述べる施工の注意点を留意しないと、盛り上がる、割れるなどの不具合が起こりえます。

図の横方向で伸縮がおこりやすい

<傷、減り>
木は細胞の周りに細胞壁があり、成長を終えた細胞部分が空洞になり細胞壁が硬くなって木材となります。空気層を多く含む構造なので外圧により変形しやすいものです。重い物や、硬い物を落とすとへこむ。尖った物を落とすとえぐれる。椅子や家具など重い物を引きずるとひっかき傷がつく。重い家具を置くと接地面がへこむ。天然の木材なので、これら日常的なダメージは避けられません。天然木でも厚さ0.5mm以下の突板を貼った物は、傷や摩耗によって下地材が見えてきますので、2mm以上の挽板を貼ったものをお勧めします。傷や摩耗が下地までとどかず、経年の味となり、長年使って張り替えの時期になっても、表面を削って再生させる工事を行うことができます。

無垢や2mm以上の挽板を貼ったものは日常の落下物などで傷がついても下地が露出することがありません

季節と施工、夏と冬の注意点

内装工事は、新築の場合は特に、エアコンが無い状況で行われるので、外気の影響下で施工することになります。高温多湿の夏、寒冷乾燥の冬。季節で大きく変わる現場の空気環境は、天然木を使ったフローリング本体に影響を与えますので、施工において配慮する注意点があります。
施工後の生活環境を考えると、エアコンで室温はコントロールできても湿度は外気の影響を受け、およそ夏70%、冬30%となり、フローリングは夏膨らみ、冬に痩せます。施工時はより厳しい環境ですので、施工後の伸縮に配慮する必要があります。夏の施工時は隙間なく施工しないと次の冬に目地が広がる危険があり、冬の施工時に隙間なく施工すると次の夏に膨張して盛り上がる危険があります。
特に冬場は低温のため接着剤の硬化が遅く、注意深く施工しないと接着が弱くて浮いて床鳴りがしたり膨張時に動きやすくなります。

天然木を使ったフローリングは湿度の影響を受けやすく、冬の乾燥で痩せ、夏の多湿で膨らみます

逃げるための納まり、巾木、框のチリ

内装の用語で「納まり」という言葉があります。内装は箱の内側を仕上げる作業ですので、壁と壁、壁と天井、壁と床という二つの面がぶつかる所(入り隅)の処理の仕方を「納まり」といいます。床は壁とぶつかる所、框(かまち:玄関から室内に上がる所の縁材)とぶつかる所の二つ納まる所があります。壁との納まりは、壁から床材の端を7mm程度離して、厚み10mm程度の巾木で隙間を隠すのが標準的納まりです。床材の伸縮を考慮したクリアランスをとるという考え方です。框との納まりは、框の方を2mm程度高くして(チリをとる)、床材の高さのばらつきが気にならないようにするのが標準的納まりです。天然木のフローリングは施工上のばらつきや、伸縮などの変化に対応できる(逃がす)納まりにすることが年を経ても美しさを保つことにつながります。 モダン志向のデザインでは、巾木が古臭く感じられて省かれることもありますが、床材のためにはあったほうが美しく、掃除機などで壁を傷つけない、家具など壁付けにする時、巾木の厚み分壁との間に隙間が空き結露しにくくなるなどの機能性も持っています。

フローリングの伸縮を考慮して壁との間にクリアランスを設けて巾木で隠す方法をトラブルを防ぐためにお勧めします

糊釘併用

フローリングの施工は、建物の躯体の床の上に行います。木造、コンクリート造などで床の状態は様々ですが、厚さ12mmのベニヤを平滑に固定(捨て貼り)した下地の上に糊釘併用でフローリングを固定する方法が基本です。捨て貼りの上に、またはフローリング材の裏面に櫛目ゴテで接着剤の必要量を全面に塗り、下地に圧着して、実の凸の付け根に斜め45度で釘を頭が出ないように打ち込み、次の材の凹をはめ込みハンマーで叩き込み固定します。大事なことは、全面に均一に接着剤が塗布されて下地と密着していることです。接着剤が少なかったり、圧着が足りない場合、床鳴りや反りなどの原因になります。そのために、全面に塗布して下地と密着しても、フローリング材の伸縮の動きに追従する弾性を持った接着剤を推奨しています。

フローリング材の伸縮の動きに追従する弾性を持った接着剤を櫛目ゴテを使ってまんべんなく塗ることが必要です 推奨接着剤BONAR848

接着材の上にフローリングを固定し、実の凸の付け根に頭の無い釘を下地のベニヤに斜めに打ち込むことで密着させます

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